90歳の毎日覚書

孫に教わりながら日々挑戦、健康などに役立つ話を覚え書きしていきたいです

75歳以上は要注意!冬の脳梗塞を防ぐための「起床の作法」

脳梗塞は季節を問わず1年中、気をつけるべき病気だが、75歳超の人はとくに冬場は注意したい。

 

 国立循環器研究センターの研究チームが2015年までの5年間に同センターで入院治療を受けた急性脳梗塞の患者約3000人を対象した研究結果が2018年に発表されている。冬(12月~2月)、春(3月~5月)、夏(6月~8月)、秋(9月~11月)の季節別の入院件数は、秋が若干少なかったものの大差はなかった。しかし、75歳超、重症度、心疾患に原因を持つ心原性脳梗塞脳梗塞は、いずれも冬に多かった。

 

「脳の血管が破れる脳出血、脳の血管のこぶが破裂するくも膜下出血、それに脳の動脈が詰まる脳梗塞を『脳卒中』と言います。昔から冬場は脳出血くも膜下出血が多いことが知られています。冬場は寒い空気に触れると血管が収縮して血圧が上がります。高血圧の状態が続くと動脈効果が進みますし、血圧が上がれば脳の血管が破れたり、血管のこぶが破裂しやすくなるからです。一般的に脳梗塞は大量の汗で血液から水分が抜けやすい夏場に多いとされますが、身体活動が衰えて血流が遅い高齢者は、冬の脳梗塞が目立ちます」

 

 脳梗塞は、脳へ血液を送る血管が詰まるために起こる病気で、高血圧や高脂血症、糖尿病、多血症、心臓病の持病や喫煙習慣のある人は発症リスクが高いことが知られている。

「その中でも最近多いのが、心臓が原因の脳梗塞です。心房細動と呼ばれる心臓の震えによる不整脈で血液の塊ができて、それが脳に飛んで脳の血管を詰まらせるのです」

 

 脳梗塞は睡眠中や起床から2時間以内の発症が多いことが知られている。

脳梗塞が睡眠中や朝に多い原因は、睡眠中は血圧が下がって血液の流れが悪くなっていること、血液中の水分が少ないこと、朝の起床時に交感神経が活発になって急に血圧が上がり、血流が早くなることなどが挙げられます」

 

 脳梗塞の場合、発症後すぐであれば、脳の血管に詰まった血の塊を溶かす薬(t-PA)を投与することで救命率が上がり、後遺症が軽くなる可能性が高まる。ただし、t-PAは発症後4~5時間以内に行う治療法。起床直後、にっこり笑おうとしても片方の顔が下がったり、口角が下がったり、両手を挙げた後に片方の手が下がってきたり、ろれつが回らなかったり、言葉がなかなか出てこなかったりした場合は、脳梗塞を疑うべきだ。

 

「日常的に、原因不明の頭痛や肩凝りが突然発症する、めまいや耳鳴り、得体の知れないしびれや震えなどの症状が続く、歩き方がフラつき、障害物がないのにつまずく、周囲から字が汚くなったと言われる、簡単な計算がとっさにできない、物忘れが多い、飲み物や食べ物が飲みにくくなった、痰がからみむせることが多い、声がうまく出ないと感じるなどの症状があるときは、血管がダメージを受けている可能性があります。一度、医療機関で精密検査を受けるといいでしょう」

 

 

 

■ヒートショックは寝室でも起こる

 とはいえ、これらはすでに脳梗塞を起こしているか、起こしかけている場合での対処法だ。起こさないためにはどうしたらいいのか?

「まずは、脳梗塞のリスクとなる高血圧や高脂血症、糖尿病や心臓病などの病気をしっかり治療することです。食事や運動、喫煙や飲酒などの生活習慣を改善することも必要です。そのうえで、起床時の習慣を改めましょう。起きてすぐに布団から出るのではなく、布団の中で軽く伸びやストレッチをするなどして、体を動かした後にゆっくりと起き上がるのが良いでしょう。布団の中の温度は人が入ることで30度程度まで上がるといわれていますが、冬の朝の寝室の室温は5度を下回ることも珍しくありません。脳梗塞は急激な温度差があると発症しやすいので、起きたばかりの体を温めることも重要です」

 

 よく、冬の入浴時のヒートショック(急激な温度変化で血圧や心拍数が変化し、血管や心臓に疾患が生じること)が話題になるが、寝室でも急激な温度差は注意が必要だと加藤院長は言う。

 

「布団に入ったままリモコンでエアコンのスイッチを入れて部屋の温度を上げるのも良いでしょう。また、脱水を防ぐために寝る前に水を飲んでおくことも大切です」

 

 厚労省発表の2022年「人口動態統計(確定数)の概況」によると、2022年の年間死因別死亡総数のうち、脳血管疾患は10万7481人(全体の6.9%)で、全死因の上位4番目。内訳は「脳梗塞」が最も多く5万9363人(男性2万8824人、女性3万539人)だった。脳梗塞で命を失わないよう、冬場は起床時の作法に気をつけたい。