90歳の毎日覚書

孫に教わりながら日々挑戦、健康などに役立つ話を覚え書きしていきたいです

心筋梗塞、脳卒中、認知症…「痛くないから大丈夫」と歯医者に行かなかった人の老後

口腔機能の衰えは、食べ物を噛んだり飲み込んだりする機能が低下するだけでなく、全身の健康状態に大きな影響を与えることがわかってきている。

産業医の池井佑丞さんは「歯の健康が、糖尿病や心臓病、脳卒中認知症の引き金になったり悪化させる要因になったりすることがわかっている。

 

■高齢者の社会的孤立にもつながる

 

 口腔内の衰えといえば、直接的には噛めないことや飲み込めないことをイメージすると思いますが、食事の際にむせる、滑舌が悪くなることも口腔の衰えに該当します。これらが積み重なると、食べられるものが減ったり、食事を敬遠してしまったり、コミュニケーションをとることが億劫になったりしますが、こうした間接的な影響もオーラルフレイルに含まれます。

 そして、十分に食事がとれないことで栄養が偏ったり、身体活動量が減りサルコペニア(筋肉量の減少)が進行したり、精神的な落ち込みが生じたりするなど、社会的に孤立する原因ともなります。

咀嚼する力が衰えると、あごを動かさなくなるので刺激が減って、脳への血流が減少し、認知機能の衰えを加速させることも指摘されており、さらにフレイルが進行するという悪循環に陥ります。つまり、オーラルフレイルは高齢者の社会性低下の入り口にもなるのです。

 

 

歯周病が心疾患の引き金に

 歯周病菌は動脈硬化を悪化させる要因ともなります。動脈硬化は血管が硬くなったり、コレステロールなどの塊がたまったりすることで血管が狭くなりますが、血管に入り込んだ歯周病菌がこれらを進行させます。血管が詰まると、狭心症心筋梗塞など、命に関わる心疾患を引き起こします。

 

 ・脳卒中のリスクも高めてしまう

 歯周病菌が血管に入り込み、脳内に移動することで、脳卒中のリスクを高めることもわかっています。脳卒中には、脳の血管が破れる脳出血、血管が詰まる脳梗塞がありますが、これらは心疾患同様、動脈硬化によって起こります。歯周病が、脳内の動脈硬化を悪化させてしまうのです。歯周病患者が脳卒中を発症するリスクは、歯周病がない人の1.48倍~2.63倍との報告もあります(和泉雄一、青山典生「歯周病脳卒中の関連」脳卒中36: 374–377, 2014)。

 

 ・歯が少ないほど認知症になりやすい

 最近ではアルツハイマー認知症の発生に関与するアミロイドβ蛋白の蓄積・増加に歯周病菌が関係していることがわかってきました。マウス実験では、歯周病菌を投与したマウスのアミロイドβの受容体が増え、認知症の症状を示したそうです。アルツハイマー認知症患者の脳内から歯周病菌が検出されたという報告もあり、人においても歯周病菌がアミロイドβの蓄積を増やすことが示唆されています。

 

 

 

■日々の歯磨きだけでは不十分

 虫歯や歯周病は初期段階では自覚症状がない場合が多く、症状が出る頃にはかなり進行しています。予防には日々の歯磨きでプラークを落とすことが必須ですが、歯ブラシではなかなか全てを落としきれませんし、歯周ポケット深くに入り込んでしまったものには届きません。そして歯磨きで取り切れずに残ったプラークは、次第に歯ブラシではとれない歯石となってしまいます。

 

 歯科定期検診では一般的に、歯周ポケットの深さを測ったり、歯石除去のクリーニングを行ったりします。そのため、定期的な検診は歯周病リスクの早期発見、早期治療につながるのです。年に2回は歯科検診を受け、ご自身の口腔環境をチェックすることをおすすめします。