90歳の毎日覚書

孫に教わりながら日々挑戦、健康などに役立つ話を覚え書きしていきたいです

実は、便潜血検査で大腸がんの早期発見はできません…多くの人が知らない、大腸がん検診の「新常識」

まずは「大腸ポリープ」の基礎知識。

 大腸ポリープとは、大腸の粘膜から発生するイボ状のできもののことで、大きく分けて「腫瘍性」と「非腫瘍性」の2種類がある。

 腫瘍性のうち、悪性のものがいわゆる「がん」。良性のものは「腺腫(せんしゅ)」と呼ばれ、大腸ポリープの約8割を占めている。

 

 一方、非腫陽性の大腸ポリープには、炎症を伴う病気に起因する炎症性ポリープや加齢とともにほとんどの人に見られるようになる過形成性ポリープなどがあるが、いずれも“がん化”することはほとんどない。

 つまり、大腸ポリープは大腸がんではない。しかも良性であるのでゆっくりゆっくり発育する。将来大腸がんに変化する可能性は「約10%程度」なので、大腸内視鏡(大腸カメラ)を受けた際に、「大腸ポリープがありますね」と指摘されても、「うわぁ大腸がんか」とショックを受けるのは早計だ。

 検査時に切除してもらい、がんか否か、がんであれば進行度はどれくらいか等を調べてもらえばいいのだ。その結果がんでなかったら、それは将来大腸がんになる不安の10%を一緒に切除したことになる。

 

 

便潜血検査では早期発見できない

「大腸がんのほとんどは陥凹型。ポリープ型や平胆型は基本的には腺腫(良性腫瘍)であって、がんではありません」と工藤医師は断言する。

 しかも陥凹型の腫瘍の9割は発育が早く、非常に悪性度の高いがんになる可能性が高い。

 

 X線(レントゲン検査)ではまったく発見できず、内視鏡が登場したからこそ発見できた早期がんなのである。

 腫瘍が小さいうちから大腸の粘膜下層に浸潤し、転移する確率も高いため、何よりも早期発見が重要だ。しかし、粘膜が隆起するポリープのような病変に比べて、わずかに表面が窪んでいるだけで、見た目の変化にも乏しいため、見つけるのはかなり難しいとされている。

 だからこそ、幻のがんと呼ばれ、工藤医師の歴史的な発見も長い間、世界的には認められなかった。その流れが変わったのは1996年、パリで行われた消化器内視鏡学会の公開内視鏡検査で、世界中の医師が注視するなか、工藤医師が陥凹型大腸がんを見つけることに成功してからだ。

 

早期発見が重要な理由

大腸がんが見つかった患者の声としてよく聞かれるのが「毎年、大腸がん検診で便潜血検査を受けて、ずっと陰性だったのに、大腸がんになってしまった」というもの。これはある意味当然で、便潜血検査では、大腸がんのほとんどを占める陥凹型大腸がんを早期発見することはできないのだ。

 

 というのも、一般的ながん検診で行われる大腸がんの便潜血検査は、ご存じのとおり、便の中に血液が紛れているかどうかで大腸内の腫瘍の有無を判断する。

排便後の便を採って検査するため痛みもないし、内視鏡検査のように面倒な事前準備も必要ない。簡便にできるのは利点であり、国立がん研究センターも「大腸がんの死亡率を減少させることが科学的に認められ、大腸がん検診として推奨できる検診方法は『便潜血検査」です』と太鼓判を押している。

 

 だが、便潜血検査では早期がんは見つけられない。繰り返しになるがポリープ型や平坦型は基本的に腺腫であり、がんではない。

便に潜血があるのは、大腸にできたポリープが排便時にこすれて出血するからだが、凹んでいる場合には、便が素通りするため出血せず、陰性判定となる。便潜血検査で陥凹型の大腸がんが見つかるのは、すでに進行がんとなり、盛り上がってきて出血するようになってからだ。

 

 

 残念ながら便潜血検査では、大腸がんの早期発見は難しく、見つかるのはポリープ型、しかもその多くは良性の腫瘍の可能性が高い。

そのため、偽陽性の多さも問題となっているが、国立がん研究センターは「(大腸内視鏡は)がんやポリープに対する診断精度が非常に高いですが、まれに出血や腸に穴が開く(穿孔せんこう)などの偶発症があります。

また比較的高度な技術を必要とする検査のため、多くの受診者に行うことはできません」との理由から、精密検査以外には推奨していない。