人間が口から物を食べたり飲んだりする以上、基本的に誤嚥のリスクは誰にでも必ずある。高齢者の場合、誤嚥により肺炎(誤嚥性肺炎)のリスクが高くなる。誤嚥によって物が気管に入って細菌が繁殖し、肺炎を引き起こすことがあるが、高齢者の肺炎の70%以上は誤嚥性のものとされ、元気でもお年寄りの誤嚥には特に注意したい。
誤嚥性肺炎で言えば、喫煙をすると肺炎やインフルエンザ、結核などにかかるリスクが約2倍になることがわかっている。これは喫煙により肺の機能が弱くなっているせいだ。今の高齢者が若かった時代、喫煙率は70%を越えるほど高かった。
高齢になって弱まった肺の機能に、現在や過去の喫煙体験が影響を与えている可能性もある。ようするに、喫煙者が誤嚥すると、そうでない場合より誤嚥性肺炎のリスクは高くなるということだ。
誤嚥は、フェールセーフの観点から、まず予防することが重要となる。基本的に誤嚥とは、物を飲み込む(嚥下)する際、本来なら食道から消化器官へ送られるが、それが誤って気道へ入ってしまうことを言う。頭の位置や角度、姿勢などによって気道が閉鎖できず、これが誤嚥につながることが知られている
──誤嚥や嚥下障害は、どのような場合に起きやすいのでしょうか。
「脳梗塞やパーキンソン病などの脳や神経・筋疾患では、嚥下のメカニズムに支障が生じ、誤嚥や嚥下障害が起こることが多いです。しかし、このような誤嚥や嚥下障害の原因は、病気だけでなく、嚥下を司っている脳神経や口腔や咽喉周辺の筋肉が衰えてくる『加齢』によって起こります」
──食事の内容、時間帯、加齢、体位などに関係はありますか。
「食べ物を飲み込んだ時、気管に食べ物や唾液が流れ込まないように、気管の入り口にある喉頭蓋(こうとうがい)という蓋が閉まります。この蓋のタイミングがずれてしまうと、誤嚥を引き起こしてしまいます。加齢による嚥下機能への影響については、嚥下回数が減少することで嚥下に関わる筋肉が衰えることです。頭が十分覚醒していない寝起きなどは、口腔や咽喉周辺の筋肉もスムーズに動きにくく、誤嚥のリスクが高まります。また、液体やツルっと喉に入るもの、パサパサして飲み込みにくいもの、口にくっつきやすいものは、誤嚥しやすい食べ物です。飲食時、首を後ろに反らした(顎が上に向いた)姿勢をとると、気道が開くために誤嚥の危険がさらに高くなります」
──独居の高齢者などに対し、誤嚥防止の注意点などはありますか。
「高齢になってくると、嚥下回数が減少してきます。空嚥下を増やすためには、日頃から坐位姿勢で生活をすることをお勧めします」
──高齢者や要介護者の周囲の人間は、どのような点に気をつければいいですか。
辻村「風邪と同じで、予防が大切となります。嚥下障害が重度になってしまいますと、病院で手術や薬で治療しなければなりません。そうならないためにも予防が大切となります。普段の生活で楽しく予防できるのが、『会話』『笑い』『カラオケ』であると思います。また、要介護者の介護を行うには、窒息や誤嚥性肺炎を予防するために、食事をする体位や食事の食べさせ方、咳や声の状況の観察、誤嚥性肺炎を防ぐ基本的知識と技術を身につけておくことが必要だと思います」
先日主人の入所している施設から連絡があり、主人に肺炎の症状があるため検査したところ誤嚥性肺炎と診断されました
早期に対応くださったおかげで容体は安定しているとのことですが、やはりどれだけ気を付けても誤嚥性肺炎というのは高齢者には起こりやすいとのことです