厚生労働省の専門部会から製造販売の承認を了承された日本の製薬大手エーザイが開発したアルツハイマー病の治療薬レカネマブだが、今後は治療に至る態勢とともに、薬価がどう設定されるのかも注目される。
承認された薬品は、ほぼすべて公的医療保険が適用され、企業からの希望書を基に厚労省が原案を作り、算定組織で薬価を決め、承認から60日以内、遅くとも90日以内に薬価基準に収載される仕組みだ。医薬品の公定価格である薬価が適用されると、患者は既存の医薬品と同様に原則1~3割の自己負担で使えるようになる。
すでに今年1月に迅速承認され、7月に正式承認された米国での価格はどうか。
米国では、標準で年間2万6500ドル(約380万円)。エーザイは2022年5月30日に、レカネマブの社会的価値に関する論文を公表した。つまり、承認される前にレカネマブの経済価値を示した。
それによると、外来、入院の費用、介護・在宅医療などの費用といった直接的なコストと、それに家族介護に伴う生産性損失の社会的観点の2つを提示。支払い意思などから複数を例示し、米国の医療制度のもとでのレカネマブの潜在的価値を年間9249(約130万円)~3万5605ドル(約510万円)、社会的観点を加味した場合は1万400(約150万円)~3万8053ドル(約550万円)とそれぞれ推定した。
その上で、米国社会におけるレカネマブの年間価値を1人あたり3万7600ドル(約540万円)と算出。初期の年間額を2万6500ドルとした。
認知症の場合、治療薬ができることで患者本人の治療費、薬剤費が削減されるだけでなく、介護する家族の仕事への影響やメンタル面の損失などの負担も減る。エーザイは今年5月、日本でのレカネマブの社会的価値を、最大で年間467万5818円とする試算結果を公表したが、試算にはそうした点も反映されている。