認知症の初期症状とは?
アルツハイマー型認知症は、物忘れから始まるのが特徴ですが、初期は記憶の中でも数分から数十日前くらいに覚えた「近時記憶」や、体験した出来事である「エピソード記憶」から失われていく傾向があります。また「今日が何月何日かわからなくなる」といった「見当識障害」も比較的初期から出現します。日常生活では、買い物の際に小銭をうまく出せない、料理をする際に要領が悪くなってきたといった変化も表れやすくなります。こうした症状が毎日のように繰り返される場合、MCIや認知症が疑われます。 精神・心理症状では、以前と比べて怒りっぽくなる、ひがみっぽくなる、やる気がなくなるといった変化が表れやすくなります。
少しでも疑わしい場合は、チェックリストの確認or早期の受診を
今まで当たり前のようにできていたことができなくなった、といった変化があった時点で、一度は医療機関を受診し、認知症もしくはMCIなのか、健常なのか、今の状況を診断してもらいましょう。認知症はゆっくりと進行していくケースが多いので、自分も周囲の人も変化に気づきにくいことがあります。チェックリストを活用すると、認知機能や生活における変化に気づける場合もあります。
認知症と診断されたら
認知症は特別な病気ではありません。これまで通り、家族の一員として接し、特別視しないことが大切です。前述したACPについても、日常生活の中でさりげなく聞き出せるといいですね。 人とのつながりは家族にとっても大事なことです。本人とともに地域の認知症カフェに行ったり、認知症家族の会などに参加したりして、専門職や認知症の家族がいる同じ立場の人たちとつながりをもっておくことは、今後の支えになるはずです。
早期発見の医学的な効果
現在は、アルツハイマー型認知症を中心に、症状を一時的に改善する認知症治療薬が増え、治療の選択肢が広がっています。認知症治療薬で早期に治療すれば、症状を緩和し、進行をゆるやかにすることが期待できるのです。
また、認知症の原因となる病気の中には、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍など、治療によって治る可能性があるものもあります。こうした病気は、早期に適切な治療を受ければ治りますが、治療が遅れると効果を期待できないことがあります。画像検査で発見できるので、こうした面からも早期に診断してもらうことが大切なのです
早期発見の効果は、それぞれの生活状況によっても異なります。例えば認知症によって生活に支障が出たときに、1人暮らしの人は家族と一緒に暮らしている人に比べて、安心・安全が守られにくくなります。そうならないためにも早期に発見し、介護保険などのセーフティーネットを準備しておくことが重要なのです。