90歳の毎日覚書

孫に教わりながら日々挑戦、健康などに役立つ話を覚え書きしていきたいです

水分不足は老化を進める? 適切な「水分摂取」が老化防止のカギ

●「老化の加速に水分摂取量が関係する」仮説を検証

 実年齢は同じでも、身体的(生物学的)には実年齢より若い人と、老化が進んでいる人がいます。老化を加速させる原因にはどんなものがあるのでしょうか。今回、米国立衛生研究所(NIH)心肺血液研究所の研究者らが着目したのが、水分摂取量です。

 

 これまでに、マウスによる実験では、生涯を通じて水分摂取制限を行うと、寿命が短縮し、複数臓器の変性が促進されることが示されていました。一方、人間では、1日あたりの水分摂取量の個体差が大きいこと、世界的には、推奨される量を摂取していない人が多いことが知られています。

 

血清ナトリウム値が高くても低くても死亡リスクは高め

 1万1255人のVisit 2時点の平均年齢は57歳で、47%が男性でした。それらの人々は、2011~2013年のVisit 5時点で70~90歳になっていました。Visit 2時点の血清ナトリウム値に基づいて参加者を4群に分け、横軸を時間経過、縦軸を生存率としてグラフを描くと、Visit 5までの生存率の低下が最も早かったのは、血清ナトリウム値が135~136.5mmol/Lの集団で、続いて144.5~146mmol/Lの集団、142.5~144mmol/Lの集団となり、生存率の低下が最も遅かったのは137~142mmol/Lの集団でした。

 年齢、性別、人種、喫煙習慣を考慮し、137~142mmol/Lを参照として比較すると、血清ナトリウム値が正常域低値だった人と正常域高値だった人の死亡リスクが有意に高かったことが明らかになりました

 

 Visit 5まで生存していた5168人を対象に、慢性疾患の発症についても分析しました。まず、4つの主要な疾患(心不全認知症、慢性肺疾患、脳卒中;セット1)を対象にし、感度解析では、それらに糖尿病、末梢血管疾患/跛行(末梢血管疾患により正常な歩行ができない状態)、心房細動の3疾患を加えたセット2について分析しました。5168人を中年期の血清ナトリウム値に基づいて層別化し、年齢、性別、人種、喫煙習慣を考慮し、セット1の4疾患およびセット2の7疾患のいずれかと診断されるリスクを調べたところ、やはり、血清ナトリウム値が正常域低値または正常域高値の人々でリスクが上昇していることが示されました。

 

 

●血清ナトリウム値が高めの人は実年齢よりも老化が速い

 続いて、実年齢および生物学的年齢と、Visit 5までの期間の早期死亡や慢性疾患診断との関係について調べました。まず、Visit 2時点の実年齢に基づいて対象者を4群(46~51歳、52~55歳、56~60歳、61~69歳)に層別化し、早期死亡との関係を調べたところ、実年齢による死亡リスクの上昇は見られませんでした。

 

 しかし、生物学的年齢と死亡の間には有意な関係が認められました。そこで、Visit 2時点の血清ナトリウム値と、同じタイミングで推定した生物学的年齢と実年齢の差の関係を年齢、性別、人種、喫煙習慣で調整して検討しました。その結果、生物学的年齢と実年齢の差が0を超える(加齢が加速している)可能性は、血清ナトリウム値が137~142mmol/Lを参照とすると、144.5~146mmol/Lの集団で44%高くなっていました。135~136.5mmol/Lの集団との差は有意ではありませんでした。

 

 今回の分析の結果、中年期に血清ナトリウム値が正常域高値だった人では、加齢が加速している可能性が示され、水分摂取量が少ないことは、老化の速度を速めることが示唆されました。また血清ナトリウム値が正常範囲内でも、高値および低値であることが、その後に慢性疾患発症と早期死亡のリスクと関係することも明らかになりました。研究者たちは、「適切な水分補給が加齢を遅らせることができるかどうかを検討する研究を行う必要がある」との考えを示しています。