90歳の毎日覚書

孫に教わりながら日々挑戦、健康などに役立つ話を覚え書きしていきたいです

「心筋梗塞」が少ない「日本人」、じつは「2つの食材」を食べていたからだった

日本人には、日本人のための病気予防法がある!  同じ人間でも外見や言語が違うように、人種によって「体質」も異なります。そして、体質が違えば、病気のなりやすさや発症のしかたも変わることがわかってきています。欧米人と同じ健康法を取り入れても意味がなく、むしろ逆効果ということさえあるのです。

 

 

 

日本人の血管を守る魚と大豆の力

 

 日本人が動脈硬化を起こしにくい原因の一つと考えられてきたのが、善玉HDLが多いことです。日本人と米国白人の血中脂質の濃度を比較した2008年の論文によると、悪玉LDLと中性脂肪の数値はほとんど同じでしたが、米国白人の善玉HDL値は日本人より10%低くなっていました。

 善玉HDLは、あまったコレステロールだけでなく、酸化LDLも引き抜いて肝臓に運んでくれます。この他に、悪玉LDLを酸化されにくくする作用や、血管の内側の細胞を守る作用も報告されており、日本でも海外でも、心筋梗塞に関しては、悪玉LDLが多いことより善玉HDLが少ないことのほうが問題と考えられています。

 日本でも食の欧米化が進んでいることから、これからは日本人も善玉HDLが減って動脈硬化になり、心臓病が増えるのではないかと予想する専門家もいました。ところがです。最近になって驚くようなことがわかりました。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、食の欧米化にもかかわらず、日本人のHDLは減っていないのです。

 

 

そして日本人の動脈硬化が進みにくい原因とされるものが、もう一つあります。魚です。

 先に書いたように、悪玉LDLバスには、コレステロールの他に脂肪酸がお客さんとして乗っています。脂肪酸はどんな脂質にも入っている成分で、大きく不飽和脂肪酸飽和脂肪酸に分けられます。そして、この脂肪酸の種類によって悪玉LDLバス全体の酸化されやすさが決まるのです。

 ところが日本人の悪玉LDLバスには、同じ不飽和脂肪酸でも、動脈硬化をむしろ防ぐEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)が多く乗っていることが明らかになりました。EPAが注目されるきっかけになったのは、1970年代にグリーンランドでおこなわれた調査です。アザラシや魚を多く食べるグリーンランドの先住民には心臓病が少なく、その後の研究で、同じ傾向が日本人にも認められたのです。

 

 日本人は伝統的に魚を多く食べてきたので、悪玉LDLバスのお客さんがリノール酸とアラキドン酸からEPADHAに変わり、動脈硬化を防いでくれていると考えられます。日本人4万人を対象にしたコホート研究では、EPADHAの摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループとくらべて、心筋梗塞に代表される心臓病の発症率が40%も低くなっていました。

 

 日本人は世界でも魚をよく食べ、心臓病の発症率が低い民族ですが、そんな日本人でも、魚の摂取量を増やせば心臓病の危険がさらに小さくなるということです。EPADHAの効果は欧米人でも確かめられており、現在、欧米を含む世界数十ヵ国で、魚に含まれる不飽和脂肪酸を濃縮した脂質異常症治療薬が使われています。