まじめな人ほど抱えてしまいがちな脳のリスクとは、一体何なのだろうか? 『忘れる脳力』の一部を抜粋して解説する。
健全な脳を保つためにも、脳の活用は〝過ぎたるは及ばざるがごとし"だ。適度に使うことが重要なのであって、使いすぎてはいけない。
適度に脳を働かせるためには、どうすればいいのか?その最大のコツは、「疲れたら休む」 「飽きたら違うことをする」ということにある。疲れを感じるということは、そのとき使っている脳の部位に、エネルギーを生み出す物質(ATP)の使用後に分泌される物質「アデノシン」が蓄積してきたことを示している。
そのままの活動を続けていたら、活性酸素が溜まり、不溶性タンパク質が蓄積して、脳の細胞死が始まってしまいますよ、というサインなのだ。
そして「飽きる」ということもまた、脳の特定の部位が疲れて、アデノシンが蓄積し始めたことを示している。疲れたなと感じたら、あるいは飽きてきたと思ったら、意識的に違うことをするように心がけよう。
脳を疲弊させないために最も有効なのが、違うことをすることなのだ。これは言い換えれば、「集中系と分散系をバランス良く使う」ということである。
脳の細胞が死んでいく「神経変性疾患」のうち、パーキンソン病やある種の認知症では、病前性格として「生真面目」 「律儀」などの傾向が挙げられている。
こういった性格は周囲の人々から高く評価されるが、集中系が長い時間、過剰に活性化しやすいため、その弊害が起こってくると考えられる。まじめな性格ゆえに、「きちんと仕上げるまで」「ひと区切りつくまで」と、一つの仕事に集中して作業を続けてしまう。
そのため「疲れた」 「飽きた」と仕事を一旦放り出して休んだり、違うことをして息抜きをしたりする、といったことができないわけだ。
これだと長い目で見れば、脳の働き方に、集中系の過剰な活性化という偏りが生じてしまうだろう。