認知症で徘徊(はいかい)の症状が出やすいのがアルツハイマー型です。逆に脳血管性認知症では、徘徊の症状は出にくいと考えられています。
特徴として「見当識障害」がみられます。これは現時点の時刻、日付、場所、人物がわからなくなって、最新の情報をアップデートできなくなることです。徘徊も「見当識障害」の一環とみられます。
一方、昔のことは正確に覚えています。そのため、その人にとって一番長い習慣が認知症後の行動に出やすくなります。定年まで数十年同じ職場に通っていたり、アウトドア派の男性に顕著です。とりわけ仕事一直線で、家と仕事の往復だったタイプは要注意です。認知症を発症してからも、「仕事に行かなきゃいけない」と出掛けなければという意識が先行してしまうのです。
徘徊する患者さんは無目的に出歩いているわけではありません。本人は仕事や買い物に出掛けたつもりでいます。ただし、目的はあるけど行き方を覚えていない。私のクリニックは東京・葛飾区の金町にありますが、ある患者さんは地元の金町から職場があった場所にたどり着けず、15キロ以上離れた草加市で見つかりました。
もともとインドア派で外出しないタイプなら、徘徊しないことが多いといえます。また、多趣味であちこちに行っていたタイプも、記憶が分散されているため、徘徊は少ない傾向にあります。
徘徊は認知症の中期の症状としてみられますが、兆候として初期に迷子になります。いつも通っている床屋から帰れなくなったり、近所の商店街の八百屋までいつもの倍以上の時間がかかってしまう。老親が「最近、散歩に時間がかかっている」と思ったら注意してみてください。
家族に徘徊の症状がみられたら持ち物にGPS端末を内蔵したキーホルダーなどを付けたり、介護保険を申請し、日中はヘルパーさんにお世話を依頼するなど対応しておきましょう。
また同居の場合、自宅に閉じ込めてしまうケースが多いのですが、できれば定期的に自宅から離れた観光地に一緒に旅行することも勧めています。患者さん本人のストレス緩和になり、「出掛けたい」という衝動を抑える役割もあります。
主人も80を半ばに認知症を患い、記事にもあるような軽い徘徊がございました
主人もまさに仕事一筋の人間だったので、やはりそういった習慣が症状に表れていたのでしょうか