医療機関ができること
Q: 認知症と診断が付いたら、二度と元には戻れないのでしょうか?
A: いいえ。認知症には、「根本解決が可能な場合」と「そうでない場合」があります。一般に、ほかの病気がトリガーとなって認知症を生じさせている場合は、その病気を治すことで認知症を改善していきます。
Q:他方で、治療が難しい認知症もあるということですか?
A: はい。ほかの病気が原因ではなく脳の変性によって生じている認知症は、根本治療が困難です。このタイプの典型は「アルツハイマー型認知症」で、進行の速度を遅らせることが治療の目標となります。ですから、どのタイプの認知症なのかを鑑別することが重要ですね。
いずれにしても、早期の対応が「進行抑制」のカギです
先述したように、治る認知症もあるので、早期発見と診断は重要です。
また、残念ながら治らない認知症だとしても、早期に対応を開始することで病気の進行を遅らせたり、その人のその後の人生をより良く変えたりすることができると考えています。
認知症の罹患率は2025年の時点で「高齢者の5人に1人」になると言われています。
認知機能が低下すると、自分のことを客観的に観察できなくなってきます。そうなる前に自覚の有無にかかわらず「自分のことを定期的に知る」ようにしてみてはいかがでしょうか。「まだまだ健康です、問題ありませんね」という結果を得ることも、1つの成果だと思います。
自分で普段からできること
Q:一部で「認知症には○○がイイ」といった情報が散見されますが、信じてもいいのでしょうか?
A: 認知症に対する効果が科学的に証明されているのは「運動」のみとされています。筋肉を動かすことで、神経栄養因子というタンパク質の一種が増加するなどの多角的な要因が好影響を及ぼしていると考えられています。
なお、フィンランドを中心とした「フィンガー研究」の報告では、A:運動、B:食事、C:脳トレ、D:健康管理の“組み合わせ”が認知機能低下に有効であったと報告されています。現在、認知症の発症や進行予防に対しては多くの研究報告があり、知見が集積されてきています。
ただし、エビデンスが低い情報も混じっていますので、鵜呑みにはできません。
認知症は、「ご本人に何かしらの落ち度があったからかかる病気」ではありません。
もちろん対策は必要ですが、それでもいつかは誰でもなりうる病気です。それだけに、地域の支え、つまり“共生”が必要なのではないでしょうか。