パーキンソン病とは
パーキンソン病は進行性の神経難病で、ゆっくりと脳の神経細胞が死んでいき、そのため特に運動の障害が多いのですが、様々な神経系の障害が出てくる病気です。
具体的な症状としては、手足の震え、動作が全体的にゆっくりになる、そして診察でしかわかりませんが筋肉が硬くといったことがあります。 最も中心的な症状は「運動緩慢」で、一番みなさんに共通する症状です。
パーキンソン病はアルツハイマー病に次いで多い、神経変性疾患です。
だいたい1000人に1人が発症し、日本人の場合は現在、16万~20万人の患者がいると考えられています。 高齢者ではこの割合が増えるので、超高齢社会となった日本はさらにパーキンソン病の患者が増えるだろうと予想されます。
海外の研究では、2015年の全世界のパーキンソン病患者は690万人ぐらいいることがわかっていますが、それから四半世紀後の2040年には倍の1400万人以上になると推計されていて、これから非常に大きな問題になっていく病気でもあります。
しかしながら、パーキンソン病は早くから治療を開始すると良い状態に回復することができて、しかもその良い状態を長く維持することができることがわかっているので、早期発見、早期治療が非常に重要な病気です。
初発症状は「手足の震え」「歩行障害」
パーキンソン病の初発症状で一番多いのは、「手足の震え」です。 特に手足を休めているときに勝手に震えてしまう。「ゆっくりと小刻みに震える」という症状が出てきたときは、まずパーキンソン病を疑います。
多くの場合は、両方ではなく「片足片手」といった始まりで、そういった震えが出てきたら注意が必要です。 それから、歩くのがうまくいかない「歩行障害」も結構頻度が高いです。 これに関連して全体的に運動がゆっくりになります。
例えば、普通に歩いているつもりでも一緒に歩いている人からいつの間にか遅れてしまう。 あるいは、朝の着替えがそれまでに比べて倍近く時間がかかるなどしたら、これも兆候と考えていいと思います。
また、細かい手の指を使うようなパソコンの操作が下手になったと訴えてこられる患者さんもいます。 そういったことが気になるようだったら脳神経内科を受診してください。
進化する治療法
パーキンソン病はまだ原因はよくわかりませんが、治療法は非常に進んでいます。ドパミン神経が失われることで一番困るのはドパミンが減るということです。 幸いなことにドパミンを補充する療法が非常に効果があります。
いろいろな良い薬が出てきているので、薬で良い状態を保つことができるようになりました。
ただ、長く薬物治療を続けていると、それだけでは症状を十分に改善できなくなってくる時期がきます。 そういった進行期には最近、非常に効果のある手術の治療が出てきました。
脳の中に電極を埋め込んで動きを改善する「脳深部刺激術」(DBS)も非常に良い治療法ですし、胃の中に胃ろうを作って、そこからレボドパを持続的に流し込む治療法も大変良い効果を上げています。
さらに、まだ実用化はされていませんが、私どもが取り組んでいるiPS細胞の移植治療、脳の中でドパミンを作ってくれる細胞を植えるということで、これも強力な効果が期待できると思っています。