「誰もがストレスを抱えて生きている現代、いつ『死にたい』と打ち明けられても不思議ではありません。想定したくはないことですが、その時に慌てないためにも、最低限の知識を持っていてほしい」
自殺したいと考えることを「希死念慮」というが、この気持ちを告白されたときに絶対にしてはいけないことがある。
・詰問や説教
・楽しかった思い出話
・飲酒を勧める
「必要に応じて『なぜ死にたいと思うのか』を質問することは大事ですが、相手を問い詰めるような聞き方や、『残された家族の気持ちを考えろ』などと叱るのは絶対にNGです。当人は相談する前に家族のことでさんざん思い悩んでいるはず。そのうえで死を選ぼうとしているのです。それを、たとえ親友や恋人であろうと、外部の人間に指摘されたら自棄になる危険性があります」(丹羽医師、以下同)
恋人同士なら過去の楽しかった思い出話で落ち着きを取り戻せるような気もするが……。 「状況にもよりますが、過去の話は『今の私じゃ一緒にいてもつまらないんだ』と解釈されてしまう恐れがある。死を意識している人はすべてを悲観的に捉えてしまうので、警戒が必要です」
最後の「お酒」は最も危険だ。 「アルコールは恐怖心を麻痺させ、思考力、衝動抑制の低下を招くので、自殺のリスクを高める方向に作用してしまう。たとえストレス解消が目的であったとしても、飲酒の提案は避けるべきです」
丹羽医師は、自殺企図を止めるのは容易ではないが、当事者の思いに寄り添うことが大切だとする。