気温の低下に伴い、今年の秋から冬にかけては「肺炎」がこれまで以上に注視されています。いうまでもなく、新型ウイルスによる重症肺炎で重症化する人が相次いだことからです。
そもそも肺と心臓は“セット”といえる臓器ですから、肺炎は心臓病とも深く関係しています。心臓の働きが落ちている患者さんには、普段から肺炎に気をつけるよう指導しています。
心臓のポンプ機能が衰えると、肺から心臓に血液を送る際にそれだけ大きな力が必要になり、肺静脈の血圧が高くなります。すると、肺にうっ血(むくみ)が起こり、細菌やウイルスが繁殖しやすくなるのです。
反対に、肺炎になると心臓の機能も落ちてしまいます。肺に炎症が起こると熱が出て全身が消耗し、心臓が普段より余計に働かなければいけなくなって負担が増大するからです。さらに、肺炎によって血液の成分が壊れて正常でなくなったり、細菌性の場合は白血球が増加して全身にさまざまな炎症を招きます。
そうしたいくつもの要因で心臓に負担がかかり、もともと心臓にトラブルを抱えていると状態が悪化してしまうのです。
心臓にとくに問題がない人が肺炎にかかることで心臓病を発症することは、まずありません。ただ、高齢者の場合は肺炎による発熱がきっかけになって、心房細動を招くケースはあり得ます。
熱が出ると頻脈になり、脈が異常に速くなると心臓に負担がかかって、とくに高齢者では心房細動の要因になるのです。また、頻脈によって肺にうっ血が起こり、さらに心臓の機能が低下する悪循環に陥ります。
肺炎によって心房細動を発症し、心臓内で血栓ができやすくなることで脳梗塞につながるなど、さらなる合併症を引き起こすリスクが高くなる可能性があるのです。
若い人が肺炎にかかっても軽症ですぐに治るケースがほとんどなのは、まだ心臓が元気だからです。逆に高齢者の肺炎がなかなか治らずに重症化してしまうのは、加齢によって心臓に問題を抱えている人が多いからだといえます。
心臓の健康を維持することが肺炎の予防につながり、肺炎にかからないよう気をつけることが心臓を守るのです。